【134】 2007参議院選  自民党歴史的大敗 与党過半数割れ    2007.07.29


 第21回参院選は29日投開票が行われ、自民党は獲得議席が30台後半にとどまる歴史的な惨敗を喫した。参議院で自民・公明の与党は過半数(122)を割って与野党が逆転、安倍首相は引き続き政権を担う考えを表明したが、厳しい政権運営を迫られる。
 一方、民主党は32の改選議席を60議席以上と大幅に増やし、初めて参院第1党に躍進、参院議長ポストとともに参議院の運営で主導権を握ることとなった。


 30日 午前5時確定 自民 公明 社民 共産 民主
  当選者数 ()内は比例    37(14)   9(7)   2(2)   3(3)   60(20) 
公示前の議席数 64 12 32


 岡山では、片山虎之助参院幹事長が民主党の新人姫井由美子氏に敗北。「参院のドン」と呼ばれる青木幹雄参院議員会長もお膝元の島根で、前職の景山俊太郎氏が国民新党の新人亀井亜紀子氏に苦杯をなめる結果となった。
 わが国の政治情勢と選挙民の動向に、大きなうねりが生じていることの現れであろう。島根・鳥取といった揺るがぬ自民党の地盤が揺らぎ、四国の4県では全て現職がひっくり返されている。1人区の勝敗を表にしてみると、下のようになる。

1人区の数 自民党 民主・野党
2001年 参院選 27 25
2004年 参院選 27 14 13
2007年 参院選 29 23

 地方において自民党の地盤が音を立てて崩れていることが見えてくる。
 もともと、自民党には地方組織というようなものはない。2000年の三重県参議院補選の最中に、私は「自民党三重県連は腐っている」と言って当時の幹事長と大喧嘩…。「自民党は自分党だ」などと公言して組織的な選挙戦を無視し、参院選も自分の市議選のための手段としか考えていない事務所責任者の自民党市議を、「寄生虫か、ダニか」と面罵して大もめ…。結果、惜敗して、幹事長と寄生虫の責任を追及するも、あとの祭りであった。それ以後、自民党は変わっていない。


 土建屋を初めとして、郵便局、医師会など、その利益を守ることを前提に、彼らを手足として選挙を戦ってきた自民党には、候補者個人とつながる人や組織はあるとしても、自民党本部や県連が声をかければ、電話をかけ、ビラを配り、ポスターを貼って、集票マシンとなる、人や組織はない。労働組合や連合の上に乗る民主党との、決定的な違いである。
 それがわかっているのに、組織を整備しようとする動きはないし、そんな人もいなかった。県連会長を初め幹部連中にも、そんな意識も…危機感もない。だから、「この組織は腐っている」と言ったわけだ。
 組織を整備することなく小泉構造改革へ突入していった自民党は、医療制度改革で医師会の支持を失い、郵政民営化で特定郵便局長会の支援を失い、公共事業削減で土建屋は動かず、地方の不況で商工業者の…、長年の農政失敗で農家の…票を失い続けてきたのである。
 こう見てくれば、政治に対する信頼と自らの組織力を失い続けてきた自民党は、敗れるべくして敗れたと言わねばならない。
 

 自民党の大敗は、今日の現実である。政治も国民もこれを受け止めて、ここからまた新たな出発をしなければならないのだが、安倍首相はいち早く続投を明言している。
 選挙戦の中盤から、自民党の幹部たちは「首相の責任は問わない」と口をそろえていたのを見ても、敗北は覚悟の上であったのだろう。これほどの大敗とは思っていなかったけれど…。しかし、安倍首相に代わる首相候補がいない現状なのだから、すでに古賀元幹事長が「辞任は本人の判断」とコメントしたように、引き摺り下ろそうとする動きは大勢にはならない。
 どうしても辞めなければならない新しい材料(選挙責任者の引責自殺のような…。ンなことはないか…)が出てきた場合を別として、党内各派に格段の配慮をしながら続投ということになる。内閣改造は避けられないところで、派閥均衡挙党一致内閣の色が濃くなるのは仕方がない。
 

 これからの安倍内閣の課題は、政治改革を目に見える形で進めることである。国民の支持を得やすい公務員改革を主軸として、自治労などの支持母体との関係でジレンマのある民主党との対決を、国民に判り易い形で示しながらしっかりと進めていくことだ。
 教育基本法の改正、国民投票法案、イラク・在日米軍支援特措法、少年法改正…などなど、戦後レジュウムからの脱却を掲げる安倍首相は、どこかに忘れかけていた日本的ナショナリズムの回帰を漂わせて、今までの内閣が企図しながら手がけることのできなかったそれなりの成果を、次々と挙げてきている。
 ここで、安倍改革を頓挫させることは惜しい。『改革を止めてはいけない』と叫びながら、安倍首相は選挙戦を戦っていた。手がけている仕事を、やり遂げたいという強い思いを持っていたのだろう。それにしては、閣僚の失言やカネの問題の処理など、脇が甘かったけれど…。
 政局に大きな動きがなければあと2年、次回の衆議院選まで、改革の推進を見守りたい。公務員改革は、本当にあるべき姿で実現するのか…。またまた、政治資金規正法改正のときのような、「5万円以下は領収書は要らない」といった程度のあいまいなものであったら、自民党そのものの屋台骨が揺らぐことになるだろうし、「あのときに辞めさせておけばよかった」と臍を噛む国民の記憶に、安倍晋三は堕ちた政界サラブレットと記憶され、父親の…祖父の名声に泥を塗ることになる。
 これからの2年間、改革の実現に向かって、強い意志を持ち、鬼神の働きをする姿を見せねばならない。その過程で国民の支持を回復し、2年後の衆議院選に自民党の勝利を得ることが、最大の政治課題といえるだろう。


 民主党は…、途中から合流した小沢氏のイニシアティブで獲得した大勝利に、党内事情は複雑である。
 それと…、小沢代表の体調が気になるところだが、今日は「おめでとう」とだけ言っておこう。その展望と課題は、また近日…。


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